ストリートアートの魅力。それって落書き?アート?
ヨーロッパで中々見かけないもの。
駅の改札、24時間営業のコンビニ。
日本人がやっている寿司屋、雨の中傘をさす人。
そして、落書きのない街。
ドイツに住んでいて、そしてヨーロッパの国を旅行していてどこでも出会うのは、グラフィティ(壁の落書き)。新しい街を旅行して落書きが少ないと、お、この街は治安いいのかなと思います。
そのくらい、どんな街もグラフィティだらけ。壁はもちろん、マンションのガラス、電車の車体、エスカレーターの段差、はては地下鉄のトンネルまで、まるで隙間を埋めるように。
でも最近、グラフィティがアートの一種、ストリートアートとして注目されてもいます。
グラフィティは結局のところ、落書きなのか、アートなのか。気になったので調べてみました。
タグ付けとしてのグラフィティ
現在一般的にグラフィティだとみなされる壁への落書きは、1960年代後半のニューヨークで始まったとされています。ビクターという郵便配達屋さんが、配達で街をぐるぐる回る中、バスや地下鉄に自分の名前を描いていた。
これをtagging identification(タグ付けすることで自分を証明すること)と呼びました。
ところでこれって、犬が電柱におしっこしてマーキングしたりとか、膨大な海のようなインターネットで心もとなく漂う記事に、少しでも誰かに見つけてもらえるように「タグ」付けしたりすることに、似ていません?
そう考えると、「なんでこんなところに落書きするんだよ〜」に対して、少しわかるような気がします。
グラフィティは怖い?
とはいえ、やっぱり私の中ではグラフィティって怖いイメージ。
実際グラフィティと治安って関係あるのかなーと思って当たってみたらありました、ありました。
カリフォルニア警察、通称LAPD。
タイトルはずばり、「なぜギャングのグラフィティは危険なのか」。
……ギャングは自分たちのテリトリー、組織への忠誠心、ステータスの誇示、そしてライバルギャングへの挑戦を示すために、グラフィティを用いる。グラフィティが描かれた地域はライバルギャングの標的になり、車による襲撃の危険性がある。……
とここまで読んで、カリフォルニア警察通称LAPDの真剣さが伝わってきて私は震えあがりました。つまり自分の家とかご近所にグラフィティが描かれたら、自分たちもそのギャングの一員としてみなされ、ライバルギャングのターゲットにされるということですね。怖い……。
でも大丈夫。ちゃんと24時間対応の、グラフィティを消すオペレーション組織がここカリフォルニア警察にはあります。グラフィティ専用のホットラインまでもれなくついてきます。
ストリートアートへの発展
こうして危険とみなされたり、違法とされたりして排除の対象となる一方で、グラフィティはストリートアートとして発展していきます。
1970年代にはすでに、ヒップホップ(=都市部のサブカル)の一要素としてその存在を認められていたグラフィティ。競い合うようにして、グラフィティ特有のデザインやペイント様式が洗練されていきます。
今日では市がだれでも自由に描ける壁を設けたり、ストリートアートをめぐるシティーツアーなんかもあったり。「公共空間におけるアート」として認識され認められるようになりました。
そしてそれは何も、アメリカやヨーロッパにおいてだけではありません。
http://tavgallery.com/yamabiko-art/ より。
ん、やけにカラフルなだるま?
そうです、なんとこのだるま、グラフィティとコラボした作品だそう。
グラフィティとだるま。新鮮すぎてどきどきしますね。
ちなみに私が今まで見たストリートアートの中でも印象的だったのが、チェコの首都プラハにある「ジョンレノンの壁」。
すごくカラフルで、私が行ったときは2-3人の人が丁度スプレーでペイントしていました。誰でもペイントできるそうですよ。観光客もたくさん。
今回調べて感じたのは、グラフィティが落書きかアートなのかって、地続きなんだということ。最初は単に名前を記すだけだったグラフィティは、徐々にそのスタイルが洗練され表現豊かになり、ついには「名前を記す」行為を離れて自由な作風やメッセージを伝える、アートへと発展します。
一方アートの核となる表現したいという欲望の一つは、元をたどれば消えていく自分の痕跡を残したい、というところから来ている。「私が存在した」という、確固たる証を。こうして今度は逆向きに辿ると、単に名前を記していただけのグラフィティに行きつくんじゃないか。
落書きなのか、アートなのかというデジタルな問いは、見る側による恣意的な線引きでしかないのかもしれません
風情ある街に落書きがあるとがっかりもしますが、それでも歩き続けていると時折はっとするストリートアートに出会うことがあります。
あなたも街のグラフィティに出会ったときは、ぜひ粘り強く歩いてみてくださいね。