思考の道場

答えのない、問いのまわりをぐるぐると。

【Webエッセイ】 本にはさまれている、様々なるもの

なにか読みたいなあって思ったとき、あなたは本を買いますか?それとも本を借りますか?

 

私は本を買うことの方が多いのですが、大学の図書館があるので高い本なんかは借りています。貸本はカバーが剥ぎ取られていて、目で楽しめる要素は少ないのですが、その分他の楽しみが。

 

そう、他の人の痕跡が、垣間見えるんです。

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図書館の人の目の厳しさによるけれど、図書館ではけっこう、ページの間に様々なるものがはさまれたまま、棚の中で本は眠っている。メモやしおりは勿論、今日はさまれていたのはペーパーナプキン。

 

ああ前の人(もしくは前の前くらいの人)はこの本、カフェで読んだのかな。よく見るナプキンだからあのチェーンカフェかなあ、なんてそんなことをふと思ってしまう。

 

一度はぱらぱらめくっていたら、本の間から給与明細が出てきた。仕事で嫌なことがあったから適当にしおり替わりに使ったんだろうか、それとも嬉しかったから、しおりにまで使ったんだろうか。

人はいろんなものをしおりに使うんだなあ、と、どこかの誰かの生活を勝手に想像(創造?)してしまう。

 

文章に引かれた線や余白に書きこまれたメモも、貸本の醍醐味。勉強のために借りる本は、結構これらに助けられることが多い。

有難い本なんかは、線が引かれたところを拾い読みするだけで読めてしまう。

 

難しい部分には線が余白へと引っぱってあって、そこメモを読むと、前の人もこの箇所で苦戦したんだな、と思ったりもして、なんだか共にこの本に立ち向かう戦友ができた気分になる。

 

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厳しいところでは、一風変わったしおりや薄く引かれた線なんかは、私の手や目に届く前に消されてしまうんだけれど、本というものを媒介にして、顔も知らない誰かの頭や生活をのぞき見できるのは密かな楽しみである。

 

私はその内本屋をつくりたくて、その暁には、自由に線を引いたり書き込みができる本を置くようにしたいな、なんて思う。

 

...逆に考えると、自分の変なメモやしおり替わりも、誰かの手に渡ってるかもしれないんだけれど。