思考の道場

答えのない、問いのまわりをぐるぐると。

【Webエッセイ】本の匂いにつつまれて

私の大学の図書館は主に地下に書架があって、階段をとんとん降りて地下二階に行くと、ふわ~と本の匂いが鼻をくすぐる。その瞬間私はなんだかくすぐったい気持ちになる。つんとした古い、紙の匂い。

 

ドイツに留学してたときの授業のない時間は、大体学校の図書館に行っていた。ドイツ人とドイツ語に囲まれた授業が終わった後図書館に入ると、ほっとしていたのを思い出す。ここでは誰も私も傷つけるものはない―大げさだけれど、そういう表現が当てはまるような安心感だった。本の背表紙にずらっと囲まれていると、圧迫感を感じる人もいるだろうけれど、私は守られているなんていう安心感を抱いてしまう。

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でも書いたけれど、そういう安心できる場所、自分の家以外に安心できる場所があるって大事だ。今風の言葉(って言い方が今風ではないけれど)だとサードプレイスって言うんだろうか。私の場合はたぶん図書館か本屋、まあつまり本に囲まれた空間である。

 

図書館は安心できるだけじゃなくて、集中できる場所でもある。いい意味で俗世間から離れたような大学の図書館の背表紙(「パフォーマンスの美学」とか「在と不在のパラドックス」とか「カフカの手紙」とか)を見ていると、目線が遠くなって私はけっこう楽になる。これは新刊がばんばん入ってくる、時代とともに走っている書店にはない良さである。

 

サードプレイスとか居場所とか言うとなんだか難しそうというか見つけるのが大変そうだけれど、要はほっとできる場所のことだ。そういう場所、持てるだけじゃなくて、つくりたいななんて思ったりする。「静かな声が聴こえる」場所を。

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