思考の道場

答えのない、問いのまわりをぐるぐると。

溜まっていくことでよさがわかるもの

クリスマスの季節がやってきますね。クリスマスといえば、数年前に「くるみ割り人形」のバレエを見に行きました。あの有名な童話の舞台です。クリスマスバレエの定番だそう。

 

私にとっては初のバレエ鑑賞でした。でも正直言って、つまらなかったんですね。まあ安い席で間近で見られなかったというのも大きいでしょうが、何を見たらいいのかいまいちわからず、そしてダンサーがジャンプして着地するときの「ダンッ」って音が気になって、というかそれが印象に残ってしまった鑑賞でした。

 

さてドイツに行って始めたことの一つに、オペラ鑑賞があります。日本じゃ手が出せないイメージがあったオペラが、トラムで数分行ったところに、しかも学生だと10ユーロで見れるのです。上手くいけば最前列で見れることも。これは行かない手はありません。

 

オペラハウスでは、定期的にバレエの講演が行われていました。私は先述した初バレエ鑑賞が上手くいかなかったので、最初のうちは行かないようにしていたのですが、知っている演目のバレエがあったので、ダメ元で見てみることに。

 

2回目見たときも、やっぱりどこを見ればいいかよくわかりませんでした。でも3回目か4回目に、比較的前の席で見ることができたんです。そうしたら、衝撃を受けました。バレエダンサーの指先の、なんと美しいこと。指先がまわりの空気をやわらかく振動させ、指先が空気に溶けていく。空気も身体も、もとは同じものでできているんだ、と思わせられる。バレエがこんなに快感をもたらすなんて、このとき初めて知りました。

 

私は美術館に行くのが好きなのですが、そもそも大学に入るまでは全くといっていいほどアート鑑賞なんてしませんでした。それがちょくちょく行くようになり、わからないからつまんないと思っていた現代アートも、今ではその「わからなさ」求めて見に行くようになりました。

 

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コップにそおっと水を入れていくと、あるところで水が溢れだします。何かの良さや面白さがわかるのって、この現象に似ているんじゃないか。思えば私が文章を好きなのも、小さいころから絵本を読んでもらっていて、活字にふれる環境が大きかったからなのかもしれません。

 

好きなことを見つけたい、趣味が欲しい。好きなことは、自分が生きていく上で支えになることだってあります。でも好きなことって、見つけようと思って見つかるものでもないんですよね。そして、1回ふれたからといって見つかるものでもない。

 

最初はつまらなくても、何回か接しているうちにその良さに気付く。それにはするめみたいな味わい深さがあります。逆に中毒性の高いもの、すぐにおもしろいと思えるものは、それが一時的になってしまうことも往々にしてあります。

 

息の長い趣味や好きなことを見つけたいんだったら、コップに水をためる時間も必要になる。私はこれが、まだ上手く言えないけれど教育や文化の発展に繋がっていると思っています。