ドイツ ハンブルク
電車を降りると、海の匂いがした。
小さな港。帆を張った船がひしめきあっている。
港が目に入った瞬間、心がふっと開いたような気がした。
どれだけ小さくても、海は人の心を開いてくれるみたいだ。
日曜日。港沿いのマーケット。
バナナとパイナップルの空き箱が、道端に広がっている。
くわえたばこを燻らせ、荷を下ろす男性。
ドイツとは思えない熱気。終了間際の値引き。
数えきれない程の海鳥。空と地の間を行き交う。
海鳥は、一目で海鳥だとわかる。なぜだろう。
飛び方が鋭い。そしてかれらは、地を見ている。
道を挟んで、レンガ造りの建物が並ぶ。
海を望むように、聳え立つホテル。
雲が一目でわかる速さで通り過ぎていく。
さあっとさす光。
海も、船も、レンガ造りの建物も、一瞬で色を取り戻した。