魔女の宅急便と才能
キキの「ほうきで飛ぶ」という魔女の特徴を、「一つの才能」として描いている。
作品中、キキが途中で飛べなくなってしまう。
いわゆる、スランプ。
キキは空を飛ぶことで仕事をしているので、仕事もできず、またお母さんにもらったほうきも折れてしまう、という状況は、見ているこちらも胸が痛い。
「何も考えずに飛べた」「飛んでいることが楽しい」という状況は、飛ぶということがキキに与えられた天性の才能であるということ。
飛べなくなることで、キキは自分の持って生まれた才能に向き合いざるをえなくなる。
最終的に、キキはほうきでもなく、そのへんのおじさんから借りたデッキで空を飛ぶ。
そのとき、キキは今までには見せたことのないような厳しい目と、厳しい口調で、「飛べ」とデッキに向かって命ずる。
そして風を集め、宙に浮かび上がる。
ほうきという道具に頼るのではなく、自分の力で飛ぶという覚悟。
自分で飛ぶんだ、という、自分自身に対する信念。
私はそこに、キキの、自身の才能に対する覚悟と決意を見た気がして、思わず泣いてしまった。
才能は、誰よりも自分自身が信じてあげないと、伸びない。
しかし、まだ磨かれていない才能を信じることには、覚悟がいる。
才能と付き合って、対話して、日々磨いて、という作業には、決意がいる。
その作業は、孤独だ。
エンディングロールの最後に出てくるキキが、少し寂しそうに見えるように。
才能を見つける、伸ばすってよく言われるけれど、
私はその才能との向き合い方の一つを、キキの、最後の飛ぶシーンに見た気がした。