【Webエッセイ】 視野なんて広がらないのだから。
すいか、花火、下駄響き。
風鈴の音色に、日暮れのそよ風。
夏はどうも、ノスタルジックな匂いがする。
夏の空は高い。この辺には高い建物なんてないから、ふと顔を上げて腰を上げて目線を上げると、そこには私の視界を超えた空が広がっている。
下ばっかり向いて手と頭を動かしていると、ふとその空の広さに面食らう。
知らない間に、視野が狭くなっていることに気づく。
青空につられて、散歩に出る。空が青いだけでなんとかなるかな、なんて思えるから。
留学もあと少し。海外に出ると真っ先に「視野が広がる」と言われるけれど、私はぴんときたことがない。視野が広がるなんて嘘。自分の視野がどれだけ狭いか気づいて、気づいて、気づいて、うんざりするほどその視野の狭さを実感することの、繰り返しでしかない。
広がるのは視野じゃなくて、頭の中の白地図という名をした、空白。
だから人は空を見上げるんだろう。どこにいたって、どんなに高いビルや天井に囲まれていたって、見上げれば空の欠片くらい見つけられるから。
自分がどれくらいちっぽけで、「瞬き一つの間の一生」を生きているかをすぐ
忘れてしまうくらい、愚かな生きものなのだから。